生き物を飼い、育て、繁栄させるということは、多大な努力を必要とします。組織的な社会を持つミツバチをどのように飼養しているのか、おおよその流れをご紹介いたします。
養蜂の主目的は蜂群の繁殖であり、これによって採蜜量が確保されます。同じ蜂群でも元気な家族もいれば、弱い家族もおり、養蜂家は綿密な注意を払って、どの家族も元気に繁栄するよう心を配り管理する必要があります。
早春にミツバチが活動をはじめると、いきなり最も危険な時期を迎えます。この時期はまだ花が十分に咲いておらず、ミツバチは花粉を集めてくるものの、貯蔵しているはちみつが底をつくことがあります。また、4月に入っても寒さがぶり返すこともあり、ミツバチの家族間ではちみつの取り合いが起きることもあります。養蜂家はミツバチたちが幸せに暮らせるよう、十分な食糧の確保をお手伝いしながら、花が咲いたら心置きなく働いてもらうための最大サポートをするのです。
5月になると花が一斉に咲き、いよいよ採蜜が盛んになるとミツバチの家族もどんどん増えていきます。そうすると巣別れ(分封)が発生して家族が分裂しますが、これを管理、コントロールするのも養蜂家の役割です。6月もこの管理を傾注して行い、それによって採蜜量に大きな差がでて来ます。7月には、蜜源樹木を注意深く観察し、採蜜を続け、7月下旬に暑さが強くなるとミツバチの涼を考えて日陰をつくるなどの工夫も必要となります。
8月の暑さの中、ミツバチは朝と夕にだけ働き、日中は休むようになります。それでも採蜜が可能な場所がある場合には、養蜂家は巣箱を移動するなどの工夫をします。暑さで元気がなくなる場合には餌を与えることもあります。暑さが峠を越して涼しくなると、また採蜜が可能となり、養蜂家はミツバチの活動を管理しながら巣箱を重ね、巣礎や空巣を入れてあげます。
9月にも採蜜が可能ですが、次第に花も終わり、10月の気温低下とともに少しずつ巣脾を減らし、余分な巣を除きながら、蜂群を整理統合していき、寒さの訪れとともに越冬の準備に入ります。無事に越冬できるか否かは養蜂の技術の巧緻が左右するところであり、11月には準備を完了します。12月、1月は巣箱には触れず、2月下旬の暖かい日に様子を見て、はちみつが不足しているようであれば餌を与えます。こうしてまた、一年が始まるのです。
養蜂は何らの技術や研究なしで成し得るものではありません。昆虫とはいえ、ミツバチはひとつの組織社会を形成し、ある意味人間以上の知識を有しており、 管理の仕方でその繁栄ぶりに相当の差異が生まれます。養蜂を業とする限り、ミツバチと会話をしながら、細心の注意と熱心な研究を日々精進して行なうのが我々の仕事です。基本的な養蜂のしごとは、初代 藤原誠祐 著「養蜂管理法」に記載されており、現在も脈々と受け継がれております。